減感作療法による花粉症治療:減感作は花粉症の唯一の根治的療法
- 花粉症の治療法・薬物の注意点

減感作療法(ゲンカンサ・リョウホウ)は、花粉症(花粉アレルギー)を含むアレルギー性鼻炎の原因となっている抗原(生体内に侵入して抗体をつくらせ、免疫反応を引き起こさせる物質の総称)を少しずつ注射する治療法です。そうすることで、ハウスダストやスギ花粉が鼻の中に吸い込まれても、鼻の粘膜にあるTh2細胞やマスト細胞(炎症や免疫反応といった生体防御の機能を働く「肥満細胞」)があわててアレルギー反応を起こさないようにするのです。言い換えれば、鼻の粘膜の抗原(生体内に侵入して抗体をつくらせ、免疫反応を引き起こさせる物質の総称)に対する反応性を軽減する治療法で、抗原特異的免疫療法とも呼ばれています。これは、現時点においては唯一の花粉症(花粉アレルギー)の根治的な治療法です。
減感作療法の仕組みと有効性・安全性
減感作療法は、アレルゲン(アレルギー疾患を持っている人の抗体と特異的に反応し、そのアレルギー症状を引き起こす原因となる抗原)を定期的に皮内注射することで抗原特異的IgG4抗体が作られるようになり、その抗体が抗原特異的IgE抗体とマスト細胞(炎症や免疫反応といった生体防御の機能を働く「肥満細胞」)の反応を阻止することで治療効果が得られると考えられていました。しかしながら、その一方で、減感作療法の効果とIgG4抗体の増加状況が必ずしも一致しないという報告もあり、当初の考え方は疑問視されました。
しかしながら、1997年と1998年に、減感作療法によって症状が改善する人では、Th2細胞が作る化学伝達物質や特異的IgE抗体が減ることが報告され、アレルギー反応そのものを根本的に治療できる可能性があると考えられるようになりました。そのために、大学病院などの耳鼻咽喉科では、積極的に減感作療法を行うところが多いようです。
減感作療法は、スギ花粉症に対して60〜70%程度の有効率があると言われていますが、週1〜2回の通院から始まり、その後は1ヶ月1回程度になるものの、2年以上の通院が必要で、いつ終了できるか予想はできません。そのため途中で受診しなくなってしなう患者さんが多いのが実情です。短期間の通院で減感作療法を行うための「急速減感作療法」も実用化レベルに達していますが、この治療法は入院が必要です。また、注射の代わりに舌の下に抗原(生体内に侵入して抗体をつくらせ、免疫反応を引き起こさせる物質の総称)を含む「舌下減感作療法」も開発されつつあります。しかしながら、いずれの治療法にしても、減感作療法だけで薬剤を飲まずに済ませられる患者さんはほとんどいません。たいていは薬剤による一般的な治療を併用する必要があり、減感作療法と併用するとよく効く薬剤というものはありません。5歳以下の子どもや重症の喘息(ゼンソク)を合併している人、あるいは高齢者では副作用としてアナフィラキシーショックや注射部位の激しい発赤(ホッセキ:皮膚表面の血管が炎症により拡張・充血して赤色化した状態)や腫れが起こりうるため、慎重に治療する必要があるため、常に注意が必要です。
また、花粉症(花粉アレルギー)の場合は、花粉が飛散していない時期からはじめる必要があり、スギ花粉症であれば5〜10月から開始しなければならないのも難点と言えるかもしれません。つまり、減感作療法は「今まさに起きている症状」を止めるための治療法ではないのです。花粉が飛散する2、3ヶ月前に治療を始めても、すぐには効果は期待できません。最低でも2年以上という長期間の治療を継続することができてはじめて効果が出る治療法だということを忘れないでください。
減感作療法の普及状況について
減感作療法は、前述したとおり、その治療には長期間にわたる年月が必要で、アナフィラキシーショックという命にかかわる副作用が出る可能性があるという問題があり、広く普及してないのが実情です。大学病院や大きな国公立病院の耳鼻咽喉科では盛んに行われていますが、緊急事態に対応できる設備が必要で、開業医がそれを広めるのは困難であると考えられます。
それに加えて、有効率が高いと判明している治療方法でも、わずか一人でも重大な副作用が起こるようでは、その病気で死ぬことがない以上、安易に勧めることはできない、といったように考える医師もいます。それに、減感作療法で効果が現われても、いつ治療を終了すれば再発しないと言えるのかがわからず、事前に効果が予測できないのに何年も続けるのは患者さんにとってよいことなのか、と疑問視する考えも医師の間にはあるのは事実なのです。
非特異的な免疫療法について
抗原液の代わりに免疫(ウイルスや細菌などが体内に侵入した際に、排除して自分の身体を守ろうとする働き)の調節機能を持つとされる薬剤を注射して、アレルギー体質を改善しようとする非特異的免疫療法を行う医師もおられます。ノイロトロピンやヒスタグロビンという注射薬を使用する治療方法なのですが、長期間にわたる治療が必要でありながら、十分な治療効果があるかどうかについては明らかではありません。そのため、この治療法はあまり採用されてはおりません。
≫次のページ「減感作療法以外の花粉症の根治療法:アレルギーワクチン「CpGモチーフ」などは世界でも注目」
◇「花粉症の治療法・薬物の注意点」のページ一覧◇
|